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ローンオフェンダーの脅威




 

(2023年4月18日寄稿記事より)

岸田首相の襲撃事件なぜ起きた?「国内テロの変質」

 2023年4月15日昼頃、和歌山県和歌山市雑賀崎漁港で、岸田総理大臣が演説しようとした直前に、若い男が円筒状のものを投げ、大きな破裂音とともに白煙が上がった。

 過去には、1971年に赤軍派が機動隊に対して鉄パイプ爆弾を投てきし、37名の重軽傷者を出した明治公園爆弾事件や、メディアを狙ったパイプ爆弾を送付した事件、また2015年には韓国人が靖国神社の公衆トイレでパイプ爆弾を爆発させた事件等、多数の事件で使用されている。


ローンオフェンダーによるテロ事件

 今回の事件は、安倍首相銃撃事件から着想を得たと思われ、ターゲットを岸田首相としていた場合、同様に事前に動向が把握しやすい選挙期間を狙ったと思われる。

警察庁長官は、本年2月、安倍首相銃撃事件を受け、山上被告のような組織や団体に属さない「ローンオフェンダー(単独の攻撃者)」の対策などを強化する考えを示したが、恐らく今回もローンオフェンダーによるものであろう 。(現時点まで、被疑者において思想信条に偏りがある組織との繋がりはないとの報道がある)


 あまり知られていないが、ローンオフェンダーによる非常に危険だった事件として、2007年に西武新宿線で「自爆テロ計画」を計画した男が摘発された西武新宿線爆破未遂事件がある。

この事件は、未然に防がれたものの、実行されれば100人以上の死傷者を出していた可能性がある。


ローンオフェンダーによるテロ事件から見える社会課題

 先述の西武新宿線爆破未遂事件の男は、コミュニケーションが苦手で無職となり、「自分を受け入れてくれない世間が悪い」という理由で社会に対して怒りを持っていた。

そして、山上被告は統一教会により家庭環境が崩壊し、人知れず過酷な生活に苦しみ、当初は統一教会に、そして後に安倍首相に対して怒りを向け、極めて身勝手な犯行を行った。


 近年の国内におけるローンオフェンダーによる事件の傾向では、通常の生活や目立たない生活をしつつ、社会に対する恨みを一方的に募らせている。

 もし彼らが社会において、救われる機会や知られる機会があれば、事件は未然に防げたかもしれない。というのも、ローンオフェンダーに対しては、警備上、現場で動向を把握するには限界がある。


 警備を行うのであれば、米国のように演説のスピーカーの周囲に防弾ガラスを設置し、導線をコントロールしやすい会場で、全員に対する手荷物検査を実施するような厳戒態勢を敷かなければならない。

そういった日本における警備が次のフェーズに差し掛かっていることに加え、社会においてローンオフェンダーの発見がなされることが重要である。


 例えば、社会から孤立した人々が、SNS等で不満を訴えるような投稿行っていたり、過激な言動が見られた場合、行政が積極的に働きかける対策が必要である。

 また、我々も日常生活において周囲の人々とコミュニケーションを取り、孤立していると感じさせないような配慮が必要である。もし、言動や生活に過度な異変を感じた場合は、行政や警察に積極的に通報する姿勢が求められ、行政や警察も蔑ろにせずに真摯に対応する必要がある。


 テロ事件から見える社会の課題は、根深い。


(FNNプライムオンライン:LINK


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